丞さんの目を見ながら話す。



「俺はずっと、お母さんの言葉は俺の存在を否定する言葉だと思ってた。いや、今もそう思ってる。……でも、もしかしたら、お母さんは仲間が欲しかったのかもしれないって思うんだ。」



『なんでお前なんだ』


ずっと、周りに言われてきたのかもしれない。



『お前は、誰にも愛されない』



お母さんの過去にも何かあったのかもしれない。



『許さない』



最後の言葉は、分からない。

俺が、何か、したのかもしれない。



「都合のいい解釈かもしれないけど、でも、俺はお母さんが大好きだったんだ。大好きな理由があったはずなんだ。」



俺は、ずっと、



「お母さんに、生きて幸せになっていいんだって、言って欲しかった」



ただ、それだけだったんだ。



「当時は、まあ、記憶も無くしてたし、そんなふうには思えなくて。全部、俺と同じになればいい。綺麗で完璧なものに嫌悪感しかなくて、誰からも必要とされなくなるぐらいに壊してしまえばいいと思った。」



俺の手を包むその手を、下からするりと握り返す。


その手を見下ろす。



「それでも、そんな俺を最初に必要としてくれた環が死ぬかもしれないって思った時、昔の俺なら自ら壊していたはずなのに、凄く怖かった」