力が強いわけじゃなかった。
その施設には、体のでかい子供が職員の手から逃げて、体の小さい職員を見つけて重症を追わせる事もある。
そんな施設で、俺が同等に扱われた理由。
「俺は、とにかく、力がないことが嫌だった。男の職員が来れば抑えられる。壊したくても、壊されれば何も出来ない。1番酷い施設じゃ、肩を外されるのはまだいい方。」
ふるっ、と丞さんの手が震える。
「いや、そいつらが悪いっちゃ悪いけど、俺も色々してたから、責めてえわけじゃなくて」
「…いいよ、続けて」
「俺は脱走しても、派手なことはしなかった。ただ、物を集める」
「…物?」
「前に、柊吾の胸ポケットに連絡先書いた紙、入れたって話しただろ?」
その言葉に、ハッとする丞さん。
「色んなもの、くすねてさ、部屋で物燃やしたり、人のもん壊したり。金隠してみたり。とにかく手癖が悪かった。まあ、日本では珍しいよな」
あはは、と笑えば、丞さんは苦笑いする。
「笑い事じゃないけどね」
「自分の大切なもんを人質にされてさ、大の大人が怒鳴ったり、謝ったり、泣いたり。俺は同年代の子供泣かすのに飽き足らず、大人も泣かしてた。そこで、自分の存在を確認してた」

