ぽろ、ぽろ、と溢れる雫。



「…大丈夫。大丈夫だよ。安心して。」



触れない。

触れた方が傷を付ける。


今は。



「綺麗にしてあげる。…俺、プロだから。」



止まらない雫。


けれど、無表情の女の子は、ふわりと笑う。


「ん」


そう頷いて。


俺は立ち上がり、1度部屋を出る。


それを追うように部屋を出てくる葉賀。


「真壁さんっ!いいんですか…っ!?」


泣きじゃくって、俺に怒鳴る彼女。


「…あの子は、きっと、真壁さんだから…っ」





「…良いわけ、ないだろ」



低く、唸るような俺の声に葉賀は押し黙る。


良いわけがない。

守らなきゃいけない。

救わなきゃいけない。

けれど、今の俺には、何も出来ない。


柊吾ならまだしも、天馬さんには、対抗する術がない。

このままじゃ、あの子を傷付けるだけだ。


……何が、起こってるんだ…耀介。



「おい、どういうことだ」


『……あれ、昔みたいな話し方だな。』


「話を逸らすな」


『何?早々に逃げたんじゃなかったの?』


通話の先、耀介の声は酷く冷たい。

目を閉じて、拳を握る。



「二度目はない」