「はい、…ああ。その子の担当なら、空いてる」



隣でスマホで通話をする和さん。

少し、声のトーンが下がった気がして顔をそちらに向ければ、和さんも俺を見ていた。

少し眉を上げて、ん?と首を傾げれば、通話は終わり、



「急ぎでエクステとメイク希望のお客様だ。あと数分でドレスも届くとのことだ。担当は、丞と葉賀。宜しく頼む」



エクステとメイク。

それだけに、反応する俺の脳を切り捨ててしまいたい。



「了解です。」


「……はい」


1人の女の子を思い浮かべるのは、葉賀も同じらしい。


準備が終わる、そのタイミング。

他のゲストが騒がしくなる。

カランカラン、と扉を開けて入ってきた人は、



「和、悪いな」



確か、耀介の兄貴。

鳳天馬さん。


「いいや、たまたま空きがあっただけだ。気にするな」


和さんとは、かなり親しいらしい。

なんの繋がりかは、知らない。

天馬さんの佇まいは、男の俺からしても惚れ惚れするほど、説得力のあるカッコ良さがある。


「今日は、こいつを頼む」


グイッと腕を引き、天馬さんの後ろから姿を現したのは


「灯織くん、久しぶり」


灯織だった。

ただ、様子がおかしい。

今まで見てきた灯織の中でも、1番、疲弊して見えた。


とはいえ、俯いていて顔が見えない。