最初から。


初めて出会ったその日からずっと。


環は、俺の欲しい言葉をくれる。



「顔色悪い。耀介には声掛けてきた?」


俺が首を振れば、はぁ、と困ったように笑って、俺が持ってきた果物のカゴを見て


「パイナップル食べよう」


「ああ」


環は、心臓が悪い。

調子が良ければ、学校にも通える。

けど、年々悪くなっていく。


そうして、去年、担当医に告げられた。


心臓移植が必要だと。

ドナーを待つしかない。


医療費。

それは孤児院からは出ない。


環は泣かなかった。

昔から体が弱かったから、運命かのように環は受け入れた。


けど、俺には、受け入れられなかった。

俺は耀介に頼み込んだ。


耀介の仕事の手伝いをするから、医療費を前借りしたいと。

俺はすぐにでも働いてその借金を返すつもりだった。


それなのに、耀介が持ってきた仕事が、ボンボンの息子の子守りみてえな仕事。

分かってる。



耀介が俺に高校に通って欲しいってこと。

だから、わざわざこんな仕事を持ってきたこと。


……仕事。

そんなふうに呼べないような仕事。



「ひお」


パイナップルをつつきながら、環が俺を呼ぶ。


「耀介に聞いたよ。学校で人気者なんだってね」


ニコッと笑って話す環。


「んなことねえよ」