「柊吾ー、これから耀介と夕飯食ってくるから、今日夕飯要らねえや」



「そう」



最近、柊吾の元気がない気がする。

いや、いつも覇気がないから、微妙なラインだけどな。


「行ってきマース」


「え、その格好で行くの?」


ジーンズに、パーカー、ダウン。


「……は?」


何が問題なんだよ。


「俺と出かける時でも、もう少しちゃんとしてない?」



「いーんだよ。耀介だぞ」



「……そう」



柊吾にとっては、かなりすげえ人なんだろうけど、俺からすれば空気みたいな存在だ。


待ち合わせ場所で何度か女に声をかけられるものの、無視していれば何とかなる。


「灯織」


聞き覚えのない声に顔を上げる。


「よお、元気だったか?」


自信が満ち溢れた佇まい。

俺の苦手な人。


「……」


名前、なんだったかな。


「……名前忘れたとか言わないよな」


「忘れた」


「…」


「俺、今日耀介に呼ばれたんだけど」


「…まだ」


「は?」


「天馬だ!」


この人、自分の名前忘れられたことねえんだろうな。すげえ怒ってる。


天を仰いで、ふう、と息を吐くと気を取り直したようにこちらを見る。