こういう人間は、稀に見る。


相容れない存在だと切り離していた。


「この世界から、1度切り離された彼女をこの世界に戻したら、きっと彼女は壊れるでしょう」


「止めるか?」


「いいえ。それが彼女の運命ならば仕方がない。癒えない傷をつけられることを彼女は恐れるでしょうが、すぐに諦め、受け入れるでしょう。あの子はそういう子です」



まるで自身のことを語るように話す柿谷柊吾。


「それに、耀介さんではなく、貴方がここに来るということは、何をしようと揺るがない、決定事項なのでしょう?


鳳天馬さん」



鳳天馬(おおとりてんま)。

鳳財閥長男の息子であり、鳳耀介(おおとりようすけ)の兄。


歳は31。耀介の5つ上。



「耀介に灯織のことは一任していた。が、あいつは灯織に甘くてなぁ。高校も3年間普通に過ごさせてやって欲しいと駄々をこねられていたんだが、その普通とやらが灯織は気に召さないときた。なら、話は別だ。」



ニコリと笑えば、ぴく、と眉を顰める柿谷柊吾。



「あの子が君に出会ってくれて良かったよ。俺の望み通りにことが進んだ。感謝する」