「最近、飼ってる女が居るんだってな」


…動じない男だ。


「そんなふうに仰らないでください。どんな事情があの子にあるのかは想像しかねます。今私は、" 預かっている " だけです。貴方がここに自ら出向いてこられたということは、お迎えの時間だと、そういうことでよろしいのでしょう?」


預かっているだけ、か。


「いいのか?だいぶ、可愛がっているようだがな」


瞳が揺れる。

俺と目を合わせていて、初めて瞳が揺れる。


「あんなに、私と理解し合える人間はそう居ない」


自身の手に目線を落とし、俺を見て笑う。


「貴方もきっと、私やあの子を理解できない。貴方の質問を聞いていれば分かります。」


その笑顔は、心の底からの笑顔。


「貴方の思う可愛がるという行為と、私やあの子の思う可愛がるという行為は別物なんです。愛して、甘やかして、優しさで包み込む。それが可愛がるということなのであれば、私は、" 彼女 "にそうした覚えはない。そうされた覚えもない」


あいつの言う通りの男だな。

俺たちの裏側にいるような、違和感。


「ただ同じ空間にいて、干渉しない。寂しさ、孤独、痛み。自らの心が傷付き、修復を求める時、修復を手伝うのではなく、流れる血をただ眺めて、会話をして、凝固するのを一緒に待つ。」