ああ、懐かしい。


ヒソヒソと俺を見て話し出すと、一斉に立ち上がり頭を下げる。

俺はそれに目もくれず、自身が俺の目的だと確信し、頭を下げ俺を見て待つその男の元へ歩く。


そして、目の前に立つ。



「いらっしゃいませ」


この店も、この男のものになったんだったな。


「この店を、よく維持しているな」


「どの代の方にも、思い出の地になるよう努めております」


軽く頭を下げるその男は、淡々と無機質な声でそう話す。

俺を目の前にしても、冷静沈着。


やり手なのも頷ける。


「今日、俺がここに来た理由は分かっているな」


低く、わざと威圧するように言い放ったとて、その男は動揺しない。



「はい。大方、理解しております。ご用件を詳しくお伺いしたく、こちらのVIPルームへ」


頭を下げて、黒服に案内させる。


俺が席につけば、俺の好みの酒が数秒で手元に来る。


そして、俺の前のソファの横に立ち、手を後ろに組むその男。



「以前の鳳のパーティー以来か



柿谷柊吾。」



こちらを見て、


「ええ。その節は、ご招待頂きありがとうございました。」


ゆるりと頭を下げる。

座るよう促せば、失礼します、とソファに座る。