放課後。

果物のカゴを下げて、総合病院に向かう。


この病院も慣れたな。


個室の扉をノックすれば、俺の大事な人の声がする。


中に入れば、



「ああ、ひおだ。もう来てくれないのかと思った」


儚げに笑う、俺の親友。


「悪い、最近忙しくて。これからはもっと頻繁に来れそうだよ」


嘘だ。

忙しくしたんだ。

耀介に悪くて。


「嬉しい、ひお。なぁんか、僕よりカッコよくなってない?」


パッチリとした二重に、俺より長いまつ毛。

ふわっと笑う顔が、俺は好きだ。


「……なんか、同性にモテるって変な感じだ。異性にもモテた経験ねえのに」


「ええ?モテモテじゃん。僕と耀介に」


「それとこれとは別だろ」


近くに椅子を持っていき、座る。


「環、髪伸びたな」


艶のある栗色の髪に触れる。

それを気持ちよさそうに目を閉じて、俺の手に頬を擦り寄せる。


「うん。ひおより長いかも。」


神尾環(かみおたまき)。

俺の一歳年上。身長は耀介と同じぐらいだったと思う。

俺より少し高い。

ひんやりした頬。


「……大丈夫だよ、ひお」


ゆっくり目を開けて、俺を見る。


「僕の心が、脳がずーっと叫んでる。ひおが大好きだって。ひおは、愛されるべき人だよ」