「……り、ひおり」


少しずつ覚醒する頭。


声の主が分かって、寝返りを打つ。


「ねえ、ここ寝床じゃないんだけど?」


「寝床だろ」


「確かにベッドだよ。でも、具合が悪い子が寝る場所なの。分かる?」


「具合が悪い子だろ、俺」


「どこからどう見ても健康な子だよ」



はぁ、とため息をついて、俺の寝るベッドに腰を掛けている男。


久々に、夢を見た。

俺がこいつに出会った時の夢。



「全く。出会った時は飛んだ暴れん坊だったのに、こんなに俺に懐いちゃうなんてなぁ」


「懐いてねえ。脳みそ溶けてんのか」



「相変わらず口悪いね?俺そんなふうに育てた覚えないんだけど」



「育てられた覚えがねえ」



当時小学生2年生だった俺は、16になった。


そして、当時18だったこいつは26。


訳あって俺、弓木灯織(ゆみきひおり)は、翔凰〈かおう〉学園という学校に通っている。


その理由と似たような理由で、こいつ、相見耀介(さがみようすけ)は、翔凰の養護教諭、つまり保健室の先生とやらをやっている。


「何?もしかして生理?」


そう言って腰を触る男。


「セクハラを重ねるな」