ハルは何も知らない。
灯織が、ハルのために頑張ってたこと。
「ひおは、無事なのかな?」
こちらに顔を出した子が、ハッとする。
「へえ、置いてきたんだ。どこかな。そうだなぁ、そこにいる君の、お兄さんのところに置いてきたのかな」
全員が固まる。
そんな中で、僕のスマホが震える。
スピーカーにして通話に出る。
『環、悪い。そっち行ったか?』
「うん、いるよ。」
『そうか、良かった。そいつらに聞こえるようにしてもらっていいか』
「もうしてる」
『さんきゅ。慎矢、皇、環には迷惑かけんなよ。かけたらぶっ殺す。ハルの事はどうとでもしろ。』
「ちょ!灯織!!!今日は会ってくれるんじゃ」
ハルが騒げば、
『会わねえわ、頭沸いてんのか』
いつも通りの返し。
「ねえ、ひお」
『ん?』
「お兄さんと一緒にいるの?」
僕が聞けば、灯織は黙る。
「大丈夫なの?」
『環』
明るい声。
大丈夫なんだと、思いたい。
『……俺、変われなかった』
その言葉だけで、理解する。
全て理解する。
『でも、今は、それでいいって思える』
涙が出る。
自分の無力さに震える。
「そう」
『ごめん。でも俺、環に出会えて良かったし、感謝してるし、変わらず愛してるよ』