「ゼン、君のこと好きなんだね」


ピクッと反応してしまう。


「さっきの何でそうなった」


「分かるよ。俺と灯織が近付くたび、眉間に皺が寄る。凄いわかりやすい」


「へえ。見てなかったわ」


「酷い女だね」


「あいつ、女だって気付いてないと思うけど」


「…そうなのか」


お腹に回る柊吾の手を触る。

骨ばった手。

柊吾は色が白いから、血管が青くハッキリと浮かび上がっている。


「…そろそろ、君のこと教えてよ」


「知らなくていいんじゃなかったのか」


「フェアじゃない。」


「そうだなー。名前は弓木灯織。10月17日生まれの16。」


「……かなりショック。16になったばっかじゃん……」


はあ、とため息を着くこの大人は、そんなこと言って手を離すつもりがない。


「生まれた時の記憶はほぼなくて、ただ、俺に向かって親が、『なんでお前なんだ、お前は誰にも愛されない、許さない』そう言ってる記憶だけが残ってる。俺に残ってる記憶は、施設に出された時から。施設を転々として、ある日、迎えに来た。」



「誰」



「耀介。耀介が高3の時、あいつは俺を迎えに来た。


柊吾は、耀介のこと知ってるんだろ?


丞さんの後輩だし、それに、鳳財閥のことも詳しいんだろ」



柊吾が黙り込む。