「なんで……なんでそんな事言うの、灯織」


犀川が、泣きそうになりながら俺を見る。


「ごめんな。……皇、後で付き合え」


笑って、皇にそう一言声をかけて教室を出る。


廊下で声をかけられても、全部返さない。

自分勝手だよな本当に。


だから、嫌ってくれて構わない。


門で、慎矢と皇を待つ。


皇も慎矢も、ほぼ同じタイミングで来る。


「じゃ、行くか」


「…なんで、兄貴からお前を連れてこいなんて連絡が来るんだ」


「え?俺も行くっつったから。」


「お前、兄貴に何したんだ。話がしてえってしか、言わねえし。それに、何でこいつまで」


皇を睨みあげる慎矢。

皇は表情を変えずに俺を見下ろす。


「お兄ちゃんが自分の悪事をお前に告白する気になった。ただそれだけだろ。」



「あく、じ?」


グンッと腕を引かれる。

引いたのは、慎矢ではなく、皇。


「おい」


跡が付きそうなほど、腕をきつく握られる。


「いづれは知ること。知らなきゃいけないこと。……それに」


悪いことばかりじゃない。


「前に進むには、必要なこと、だろ?」


皇に真剣な目で答える。


「大丈夫。全部、俺が保証する。」


緩まる手を解いて、歩き出す。


開店前のクラブ。

慎矢が先頭を切って中に入り、前に入ったVIPルームに入る。

クラブの中を眺める後ろ姿。