「やっぱ、こっちの方が落ち着く。

優しくていい子なお前らには、分かんないよ。分からなくて、いいよ」


席を立って教室を出る。

誰も追ってはこない。


簡単だ。好かれるのは大変だ。


嫌われるのは簡単だ。


『柿谷柊吾 : 今日話すよ』


震えたスマホにそう表示される。


『ミキ : 俺も行く。慎矢と行くから』


『柿谷柊吾 : じゃあ、ゼンも連れてこれる?』


『ミキ : 任せて』


そう返して屋上の前の踊り場で、帰る時間まで眠る。


6限が終わって、教室に戻り、HRが始まる前に教室を出る。


「おい、灯織」


腕を掴むのは、礼。


「ん?何」


「お前、なんかあったのか」


「心配すんな。悟り開いた、って感じ」


「真面目に答えろ」


「真面目に、か。さっき言ったことは全部本当だよ。裏切った好きな人の香水、真顔で付けられるようなクズなんだよ、俺。」


にへら、と笑えばパンッと頬を殴られる。


「笑うな」


ああ、心が痛い。

ごめんな。


そっちの方が俺らしい。



「もう、話しかけなくていい。俺が間違ってたんだ。人に好かれようとするとか、阿呆なことして。幸大も悪いな。お前のこと馬鹿馬鹿言ってたけど、俺が1番馬鹿だった。お前らと平然と笑ってられるような人間じゃなかった」