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数日経ってもまだ俺の初恋話は飛び交っていて、ため息が出る。
香水は毎日付けてる。
お守りみたいなもんだから。
「最近、灯織香水つけてるよね?」
犀川が首を傾げる。
「もらったんだよ」
「はっ、まさか、初恋の相手か!?」
変なところで勘のいい幸大。
黙っていれば、周りのヤツが
「がち!?」
と立ち上がる。
「え、ブランド物じゃない?結構いい香りだけど」
「ブランド物」
「そんなプレゼント貰っちゃうなんて、付き合っちゃえばいいのに!」
「告られた」
「はあ!?急展開すぎるだろ!!!」
「振った」
「は???」
幸大がバグる。
「灯織はその人が好きで、その人も灯織が好きで、告られたのに振った。は?」
「お前って、そんな百面相できんだ。あほ面すぎる」
ケラケラ笑えば、信じらんねえって顔で周りが俺を見る。
「がちで分かんない。どういう事」
犀川が眉間にシワを寄せる。
「その人に他の人とデートする手伝いをさせた。挙句、その相手と寝た。その相手はその人の後輩。」
空気が冷めていく。
「つまり、俺が、ドクズって事」
周りの目が、刃のように俺を突き刺す。
ああ、ダメだ。
俺は変われない。
安心してしまう。
それでいい。それでいいんだ。

