「……なんて言うか、やっぱり灯織って」
良い人だよねぇ
俺はイヤホンをして目を瞑る。
何がいい人だ。
名前も知らねえやつに挨拶されんのが、気味悪いだけだ。
目を閉じて、どのぐらい経ったか。
パコンッと頭を軽く叩かれ、俺はゆっくり目を開け、目の前の机を蹴り飛ばした。
「おい、誰の頭殴ってんだ」
イヤホンを取り、立ち上がる。
「弓木灯織。お前の頭だ。出席取ってんのにイヤホンする馬鹿の頭だ」
そこに居たのは、担任。
「ああ、アンタか。ならいいや」
「おう、そうか。ってなるわけないだろ阿呆!」
机を直して座る。
周りはゲラゲラ笑ってる。
まあ、これは俺が悪いな。
「橘センセ」
「あ?」
「悪かった」
そう頬杖を着いて見上げながら言えば、橘渉(たちばなわたる)はオロオロと身の置き場を無くす。
この人も悪い人ではない。
俺の事情は知らない。
そして、生徒思いな人なんだと思う。
「今度は叩かねえで、イヤホン外して」
「阿呆!!!時間確認して自分で外せ!」
また、ドッと沸くクラスメイト。
ったく、と言って、橘は教卓へ戻っていく。
このクラスもまあ。
悪くはない。

