「なんか、この前ね?家庭科で作ったお菓子灯織に持ってきた子がいて、その子が名前言おうとしたら、西山サンキュ、って名前言い当てたの!」
「俺はエスパーか。言い当てたんじゃねえ、知ってたから礼言っただけだ」
明るい茶髪のショートボブ、口元にホクロ。
俺の出来事を得意げに話すのは、犀川柚(さいかわゆず)。
教室に着き、席に座る。
当たり前のように隣にイスを持ってきて座る犀川と、黒髪ロングにピンクのインナーを入れている与坂舞子(よさかまいこ)。
「なんで知ってたのぉ?」
「……」
その質問に与坂の目を見る。
ぱちぱちと瞬きをしてキョトンとする。
「はぁ。じゃあ、お前は名前も知らねえやつに挨拶返すのかよ」
なんで俺は、自分の行動を説明しなきゃいけねえんだ。
ワイヤレスイヤホンをカバンから取り出し、耳につける。
それを与坂が手で制止する。
「あ?」
「じゃあ!さっき挨拶してきた子達の名前もぉ?」
「……全員はさすがに知らねえよ」
「じゃあ、選りすぐりの可愛い子の名前だけ…?」
「んなわけねえだろ。聞いてんだよ知ってそうなやつに。本人に聞いて勘違いされたら困るからな」
そう答えれば、与坂は手を離して口を開けたまま固まる。

