「おーいてめえらー、うるせえぞー。予鈴をガン消ししたぞー」


橘の声がする。


「バナ先!聞いてくれよ!灯織が恋してんだってよ!!!」


バサバサ、と大量のプリントやら紙類が落ちた音がする。


「……はっ、いやいやいや、恋ぐらい誰でもすんだろ?そんな、でかい声出すことじゃねえ。」


「橘先生も動揺してんジャーン」


「手が滑ったんだよ。それに、別に弓木だって初恋とかじゃあるまいし、大袈裟な」


……視線が集まってる気がする。

もう俺の身の置き場はない。


よりいっそう縮こまれば、パリーンと何かが割れる音がした。


「ああ!!!バナ先!シャーレが!」


「……初恋…なのか、弓木」


「気になってる橘先生、ウケるぅ」


「はぁ…?弓木だぞ、あの、弓木が」


「どの弓木だよ。」


ぼそっと呟く。


「16とは思えない落ち着きと余裕、線が細いのに頼りになりそうな立ち振る舞い、いくらモテても付け上がらずに毎回紳士的に断る、あの弓木だぞ……それが初恋って」


「……アンタ喧嘩売ってんだろ」


机から降りて橘を睨む。


首の後ろを擦りながら、教室の出口に向かう。



「ちょ、おい!弓木!」


「今日の授業はボイコットで」


「おい!今のは確かに俺が悪かった!だから、相手ぐらい聞かせろ」


「殺すぞ」