「割れ物なんか2階に置くなよ。下にじいさん居たら死ぬぞ」
「ふふ、そうねえ。今度からはプラスチック製のものにしようと思ってるわ」
ホント、花が好きなんだなこの人。置かねえって選択はねえのか。
「そうだ、お礼に今日のお夕飯のおかず取りにいらっしゃいよ。何時でもいいから」
「ん、分かったから退けてくれ。遅れる」
「弓木くん気をつけなさいね」
いってらっしゃいと手を振るばあさんたち。
何が楽しくて、俺なんかに声をかけるんだか知らねえ。
『これからは、ひおの事情を知る人は少なくなっていくと思う。ひおに同情で声をかける人も、もうゼロに近い。だからね、ひお。これから声をかけてくる人を見分けられるようにしよう』
あのばあさんたちは、無害だ。
人にやさしく。
そんなんはどうでもいい。
やさしくするギリもねえ。
けど、あのばあさんたちは笑ってる。
俺を見て、笑ってる。
嘲笑うでも蔑むでもなく。
「悪くはねえな」
家から学校までは徒歩20分。
人が多い場所は嫌いで、電車やバスは使ってない。
翔凰は偏差値はそこそこ高い。
私立で、初等部からエスカレーター式。
でもまあ、高等部は内進生と外進生半々ってところ。

