「……なぁに、それ。」


丞さんは眉間に皺を寄せて、上がる口角をどうにか抑えようとしてる。


「う、わ」


俺は自分の感情に、目を見開き、口元を手で覆う。


うわうわうわうわうわ。


え、まじか、俺。



「帰る」



「え?」


支えてもらっている丞さんの手を解き、もう既に復活した脚で丞さんから少し離れる。


「……キャパ超えた。家帰って寝る。今日はさんきゅ。じゃな」


早口で話す。

そこから、家までの記憶がない。

走ったのは分かる。


ベッドにぼふっと倒れ込み、あの時の自分を思い出して恥ずかしさでどうしようもなくなった。


「……うわぁぁぁあ、なんだあれ、はあ!?」


いや、あんなん、嫌じゃなかったことを答えたようなもん。

つまり、もっとしても、いいって言ってるようなもん。


俺を、襲いそうなのを必死にこらえてた人に、俺は、やめられて、寂しさを感じた、俺は、



「……無理。もう顔合わせらんねえ。」



目の上に腕を乗せ、ため息をつく。


すると、ポケットに入れていたスマホが震えて、画面も見ずに出る。


「はい」


『お疲れ様、灯織』


「ああ、耀介」


『あのさ、なんか、丞から』


ぶち、と通話を切った。


顔が熱くなるのが分かって、尚更自分がいたたまれない。


名前だけで、何こんな動揺してんだよ俺……


キモすぎる……