ああ、丞さんが、困ってる。


それしか、頭に出てこなかった。


それしか、出てこないことに、戸惑った。


でも、ダメだ。



「丞さん……俺、今すげえ弱ってる。頭の中、ピリピリする。丞さんの手、…気持ち、いい。このまま、丞さんに甘えて、抱きしめられてれば、ずっと気持ちがいいんだと思う」



丞さんの背中に腕を回す。



「丞さんの優しさに甘えて、しんどいこと全部忘れたいって、今思っちまってる」



丞さんの服をぎゅうっと掴む。



「……でも」


その手から力を抜いて、だらんと腕を下ろす。


「まだ何も出来てねえ。まだ誰も救えてねえ。丞さんに今すがろうとした俺は、ただ逃げてるだけ」


丞さんの震えが、止まる。

それが何故か、寂しくなった。


「……ごめん」


丞さんは、俺を支えたまま体だけ離す。


「灯織が愛おしくて、堪んなくなっちゃった」


はは、と苦笑いする丞さん。


「こんなことして、ごめん。」


ツキ、と胸が痛む音がした。


「灯織に先に言わなきゃいけないこと、飛ばしちゃったな。」


黙って、丞さんを見る。


「逃げていいんだよ。さっきも言った通り、逃げ場所がないときっと壊れる。逃げて、また前に進もうと思った時は、背中を押すから。……今度からはこんな事をしないと、誓うから、俺の事、逃げ場所に選んでくれない?」