「……まあでも、自分から前に出てこられちゃ、構ってやらなきゃなぁと思って」



「……きめぇんだよ、お前」


「おいおい。別に殴られてえとかじゃねえよ?気付いてるか、慎矢」



組んでいる脚をゆっくり下ろして、立ち上がる。


キスしようとした時の顔の近さ。


「人より優位に立ったと自覚した時、お前は笑う。でもお前は、俺と話す時、笑わねえ時間の方が多くなってる。つまりだ。」


慎矢の黒のロンTの襟元に、指先でサラリと触れる。


「俺とは、素で話してるよな、お前」


笑わず真っ直ぐに目を見てやれば、微かに目が見開かれる。

気付いていなかったんだろう。

兄貴に似せた仮面が、俺の前ではゼロになってたことを。


「お前のことはよぉく分かる。知ってるんじゃねえ。" 分かる "んだよ。俺が近付いてくるのが怖くて怖くて堪らない。そんな自分も恥ずかしくて堪らない。だから虚勢を貼って、力に訴えて。」


「黙れ」


目線がどんどん下に降りていく慎矢。


「馬鹿にしてる訳じゃない」


誠心誠意。

面白がる口調をやめてそう言えば、ピクリと身体を震わせる慎矢。


「お前自身を笑ってるんじゃねえ。弱い自分を認めたくないお前が馬鹿らしくて笑ってるんだよ。弱い自分がいることを気付いてるのに、認めるどころか隠そうとしてるお前が」