そう、来たか。


「ふっ」


笑ってしまう。

いや、どちらにしろシラを切り通すつもりなど毛頭ない。


「はは、そう来たかぁ。降参降参」


ケラケラ笑ってから、息を吐いて、笑わずにニッと口角だけをあげる。

地声で話せば


ガンッ


躊躇なく殴られる。

じわぁっと口の中に広がる鉄の味の液体を、殴られて向かされた方向に勢いよく、プッと吐き出す。


「おい、お前何して」


憤りを含んだ丞さんの声。


「丞さん、大丈夫。こいつに殴られんのも蹴られんのも首締められんのも、慣れてるから。な?柿谷ぃ」


仁王立ちで軽蔑の目で俺を見下ろし、鼻で笑う柿谷慎矢。


「は…?」


「ここにお前がいる時点で隠すつもりは毛頭ねえよ。でもま、気付かねえならそれはそれでいいかと思った」


口元を指で拭って、ゆっくり足を組む。


「何を勘違いしてるか知らねえが、柿谷……いや柿谷ここに二人いるもんな?慎矢って呼ぶか?」


ははっ、と乾いた笑いをすれば、手の甲で逆方向に殴られる。


「…んだよ、照れんなよ。慎矢、お前のこと構ってやりたいとこだけど、今日はお前に構ってやる日じゃねえんだよ。」

スリスリと自分の手の甲で、殴られた頬を撫でる。