「その猫撫で声、やめろ」


確実に俺だって分かってる。


「柔けえ話し方やめろ。何も知らねえって面、やめろ」


みるみる、目に力が入る。


「兄貴は関係ねえだろ」


兄貴、大好きなんだなぁ。

だからだろうなぁ。


だからお前には会いたくなかったんだよなぁ。


上げている手を握り締める。

痛い。

心が、痛い。


目を閉じて、これが正解なのか不安になった心を震わせる。


目を開けて、首を掴んでいる手に、俺の手を重ねる。



「…ごめんなさい、何の話だか分からない」



眉を八の字にする。



「お前、とぼけられると思ってんのか?」


身体を震わせて、口端をヒクヒクと痙攣させ、信じらんねえと言いたげに俺を見下ろす。


「えっと……私、初対面、だよね?」


「じゃあ、さっきの……!!!」


慎矢の感情が爆発する。


「さっきの……声はなんだって言うんだ。説明しろよ」


目を閉じ、眉間に皺を寄せ、感情を押し殺そうと努力して、声のボリュームを下げる慎矢。


「声……?」


「……はっ、そうかよ。お前はシラを切るんだな」


黙って見上げていれば、首を掴んでいた手を顎に滑らせる。


ピクッと体が反射的に少しだけ後ろに反る。


慎矢は、俺の唇に目線を下ろして顔を傾け顔を近づけてくる。