テーブルに戻る途中で、肩を掴まれる。



「ねえ君、ハンカチ、落としたよ」


そう言って、確かに俺のハンカチを差し出してくれたのは40代ぐらいの端正な顔立ちの紳士。


「すみません、ありがとうございます」


丁寧に頭を下げる。


「いいえ、素敵なお嬢さんに出会えて嬉しいです。こちらこそありがとう」



わあ、凄いな。



「父さん」



その声に、背筋が凍る。



「では」


ぺこりと頭を下げて、急いで進行方向を見る。


席に着いて、一旦落ち着く。


あの声は、確かに、



「じゃあ、そろそろ向かおうか」


「あ」


カバンを開けようとしたら、



「チェックなら済ませたよ。言っておくけど、いくらお礼だからって年下の女の子に奢られるのは流石にカッコつかない。カッコつけさせてね」


ニコッと笑う丞さん。

ホント、益々かっこいいのにもったいない人だな。


「……借りは他で返す」


「はは、男らしいね」


申し訳なさで体が縮こまる。


「丞さん、ちょっと灯織の方の知り合いがこのお店に居るから、少し隠して貰えると嬉しい」


「いいよ。じゃあ、くっついて歩きな」


ポケットに手を入れて歩く丞さんの腕に、両腕を絡める。

身長的に言うと、俺が175あって、多分丞さんは180ないぐらい。

だから、少しでもくっつかないと隠れようがない。