私、染川 初は今、大好きだった元彼を、ソファに押し倒しています。

「初は大胆だなー。」

そう言って笑う元彼を前に、手が震える。
なんで、、なんでこうなったの!?!?



時を遡る事、3時間前。

その知らせは、私の寝起きに突然現れた。

朝に弱い私は毎日、寝起きは牛乳を飲む。
いつも通り、コップに牛乳をそそいでいると、お母さんに声をかけられた。

私の両親は海外出張が多い仕事をしていて
明日からまた、1ヶ月出張に出かけるという。
もう慣れてるから、特に何も気にする事はないんだけどね。
その知らせに「いってらっしゃい。」と返事をして、牛乳を冷蔵庫に戻そうとしたその時

「初ー?今回の出張の間は、颯くんのお家にいてね。」

手から牛乳パックがすべり落ちた。

「ちょっと初!牛乳落とさないでよ。」

今、お母さんなんて言った?

「え…?」

「え…?じゃないわよ。
実は颯くんのご両親も同じ期間で家を空けるらしくて、是非うちの子とってなってね。
ほら、今時家で女の子が1人きりって怖いから。」

本当に、何を言っているんだ。
だって、だって、ありえないでしょ!!

颯こと、賀川颯は、私の幼馴染であり、「元彼」である。

中学3年生で告白し、付き合いはじめて、高校も同じで仲良くやっていたはずが、つい2ヶ月前、振られたばかりなのに。

まだ頭の整理が追いついてない私に、更にお母さんの言葉が重なる。

「そんな驚く事じゃないでしょ。幼馴染なんだから。」

そりゃただの幼馴染だったら良かったよ!
どうせ振られてるもん!!
と叫びたい所だけど、お互いの両親は、私達が付き合っていた事を知らない。

付き合いはじめたのが中3で、思春期だったっていうのもあって、隠してたんだよなぁ。

「まあとにかく、そういう事ね。」

ウインクをしてその場を去るお母さんに、おもわず飛びかかりそうだったが、ぎゅっと踏みとどまった。

どうしよう、元彼と同居なんて、、。

でも、

「かなり不安で仕方ないんだけど、場所的には悪くないんだよなぁ。」

そう思うのには理由があった。
幼馴染ではあるが、普通の家庭である染川家とは反対に、颯の両親は大手企業の社長さんで、賀川家はいわゆるお金持ちってやつだ。

だから当然家も豪邸と言える程で、子供の頃は遊びに行くのが毎日楽しかった。

「そんな家で1ヶ月、、、。
関わりさえしなければ、意外といける??」

そんな事を考えてるポジティブな私には、この後、あんな事になるなんて思いもしなかったんだ。