7月、夏。
蝉の鳴き声が響き渡るほどに、その日は暑かった。私はこの暑さから逃れる為にカフェで涼んでいた。この歳にもなると1人なんとか。が全然苦ではなくなってしまった。むしろ1人の方が気が楽だと思ってしまっている。誰かに合わせなくてもいい、見たいものを好きに見れてご飯だって好きなものを食べられる。それが幸せだと思っている自分は異常なのか、最近ふとそう思ってしまうのだ。
「仕方ないじゃんね。」
たった一言そう呟きながら目の前のコーヒーを飲む。苦味が口の中に広がる瞬間、私の思考は一気にスッキリとしたものになる。
ー別に恋愛ができない訳では無い、振られたのが少し応えてるだけ。昨日の今日だし…なんてていのいい言い訳を考えているあたりが幼稚なのだろう。コーヒーの湯気がそんな黒い感情全てを持っていってしまえばいいのに。

「あれ?絵崎?」

ふいに呼ぶ声がした。振り返るとそこには、幼馴染の篠森 結が笑って立っていた。この男は私のことなんて女扱いすらしてくれない。むしろ男より強いんじゃないかとか、なかなか失礼な男なのだ。

「休みの日まで篠森、出た篠森、何の用。」

ぶっきらぼうにそう返すと、彼は私の目の前の席に座った。即座にメニュー表を見てどれにしようかな、神さまの言うとおりが始まっていた。昔からそうなのだ、何事も自分では決められずこうやって運任せか他人任せで生きている男なのだから。