公爵の娘と墓守りの青年

「本業って、いつの話だい? 五百年近く経った今では俺はただの墓守りだよ。この都の人々は俺を墓守りだと思ってるしね」

「この都の人々がそう思っていても、貴方には剣を持っていて欲しいんです」

のらりくらりと躱そうとするカイに、イストは強く言った。水のように透き通った水色の右目、意志の強い鋼のような銀色の左目。それぞれ色が違うカイの目とぶつかる。
困ったように頭を左手で掻き、右手を腰に手を当てて、カイは空を見上げる。
空はまだ暗く、辺りは虫さえも寝静まっている。

「――分かった。考えておくよ。はい、この話は終わり。さぁ、本当に遅いし、帰ってしっかり寝ようね、イスト君」

そう言って、カイはイストの背中を押した。

「えっ、ちょっ、カエティス隊長?!」

「あ、イスト君。ビアンの前ならいいけど、他の人の前では俺のことをカエティスじゃなくて、カイって呼ぶようにね。色々、説明が難しかったりするからね。もちろん、隊長もなしね」

ぐいぐいイストの背中を押しながら、カイは忠告した。

「それは分かりますが、もう少し居させて下さいよ。久々にお会いしたのですし、たくさん話しましょうよ」

自分の背中を押すカイに、顔を後ろに向けてイストは言ってみた。

「駄目だよ。これから招かれざるお客さんが団体で来ちゃうから」

それに対応しないといけないから、と答え、カイは断った。