公爵の娘と墓守りの青年

女神ネレヴェーユが閉じ込められていた部屋で、トイウォースと再会した頃。


カイは墓地の中央にある大きな記念碑のような形のカエティスの墓に腰掛けていた。
日中であれば、墓参りに来た都の人々に見つかって怒られるかもしれないが、今は夜だ。
夜に墓参りに来る者はまずいないので、誰にも見つからないし、怒られることはない。

「何せ、座っているのが墓で眠っているはずの本人だしなぁ」

墓に縋り、カイはのんびりと呟く。

「その本人が生きているのを知ったら、この墓を作った者は腰を抜かすだろうな」

カイの呟きを聞いていたビアンが横から口を挟んだ。

「あぁ、それがさ、墓守りとしてなら会ったことがあるんだよね、俺」

「…………はぁ」

明るい声で笑って後ろ頭を掻くカイに、ビアンはわざとらしく大きく溜め息を吐いた。
普通、生きているとはいえ自分の墓を見たらショックくらいは受けるだろうに、どうしてこの男はショックを受けるどころか、明るく話すのかビアンは不思議で堪らない。

「何だよ、ビアン。そのわざとらしい溜め息は」

「お前が変な奴すぎて、常識ある俺が呆れている意味の溜め息だよ」

再び、ビアンは溜め息を吐き、答えた。