そんなことを思いながら、リフィーアは道端をまだ転がっていく小石から目を離し、ふと前を見た。墓地と自宅、叔父の屋敷のちょうど中央あたりにあるいつもお世話になっているパン屋だ。
いつの間にか、ここまで歩いていたらしい。

「そういえば、もうパンがなかったんだっけ」

自宅に置いてある食糧を思い出しながら、リフィーアは呟いた。
ふと、生前の両親もこのパン屋を愛用していたらしいことを思い出した。

「お父さんとお母さんも喜ぶだろうし、ちょっと多めにパンを買って、お墓に供えよう♪」

両親とパン屋のことで少し気分も晴れ、リフィーアは軽い足取りで店内へと入った。





パンを買い終えたリフィーアは、墓に供える花を墓地の近くの花屋で買った。
叔父の屋敷であったことなど忘れたような満面の笑みで、リフィーアは墓地へと続く門をくぐった。

「いつも思うけど、どうして、この都だけ墓地が中央にあるのかな……」

リフィーアは木々の間にある舗装された道を歩きながら、呟いた。
木々が覆い茂る森の中にある墓地は、どういうわけなのか都の中央に位置している。
叔父の家族に連れられ、何度か隣の街や都に行ったことがあるが、どの街もどの都も、墓地は外れに位置していた。
リフィーアが生まれ育った都――カエティスの都だけ、墓地が中央にある。
都の名前にも、物語にもなっている何百年も前にいた騎士のカエティスが眠る墓があるから中央にあるだとか、当時の長が中央に置くことを決めたなど様々な憶測が長い間、飛び交っているが未だはっきりとした理由は分かっていない。
リフィーアも両親の墓があるのもあって気になって本を読んだり、近所の年配の人達に聞くのだが、やはり分からなかった。