そして、棺から起き上がる音が聞こえ、身体が見える。
 それを見たエマイユが息を飲む。

「……っ! う、嘘、だろ……」

 呆然と棺から起き上がったモノを見て、エマイユは口に手を当て、カイとイストを見る。
 棺から起き上がったモノを見たイストは青ざめた顔で呟いた。

「……司祭、様……」

 震える声で呟くイストに、棺から起き上がったモノが微笑む。
 前世で自分を本当の子供のように可愛がってくれた大切な人の微笑みと声が脳裏に浮かんでくる。
 目の前にあるその微笑みも声も紛れもなくその人と同じで。
 正体が何なのか知っているのに、否定したいのにイストには出来なかった。

(誰か、否定してくれ……! あの人じゃないって!!)

 カタカタと翠宵の剣の柄が音を立てる程、イストは強く握る。

「ミシェイル、あれは違うよ」

 静かに、カイが告げた。
 その声で、震えが止まり、ハッとしてイストはカイを見た。

「司祭様じゃないよ、イスト君」

 前世の名前と今の名前を呼んで、カイが否定してくれた。

「……カエティス、兄さん……」

 本当の兄のように思っているカイが否定してくれたことで、目の前のモノに感じていた恐怖が消えた。