棺から聞こえる声に、イストの身体が強張った。

「……そんな……まさか……」

「イスト……?」

「イスト兄さん?」

 震えるイストの声にウェルシールとエルンストが怪訝な表情を浮かべる。そのまま、イストが見つめる先――棺に目を向ける。
 棺はまだ何も異常は感じない。何も見えない。
 だが、声が聞こえた。
 何かがいるのは分かるが、まだそれが何なのかが分からない。
 その分からないものにイストは反応し、少しだけ顔が青ざめていた。
 カイも僅かだが、眉を寄せている。
 ウェルシールやエルンストには分からないが、二人には分かるモノが棺にいる。それだけは分かった。
 辺りが静かになった時、棺の中から手が伸び、縁に触れる。

「隊長……」

 今までウェルシール達が聞いたことがない程の弱々しい声音でイストがカイに声を掛ける。

「イスト君、騙されないで。違うから」

 安心させるようにイストに微笑み、カイは言う。
 その言葉の意味が分からず、静かに遣り取りを見ていたリフィーア達も首を傾げる。

「カエティス、違うってどういうことだい? 説明して欲しいんだけど」

 眉を寄せ、エマイユが尋ねる。

「違わないよ、カエティス君」

 エマイユの言葉にカイが答えるより先に、棺の中のモノが告げる。