公爵の娘と墓守りの青年


怒鳴るように言い、トイウォースはカエティスをベッドへもう一度押し戻す。

「俺もネリーのことを考えてるよ、トーイ。ネリーはこの国をとても大事にしてる。俺なんかの為に力を使ったことで、この国から離れて心を痛めて欲しくない」

「ネレヴェーユ様は国よりもお前が大事なんだ、カエティス」

今まで黙っていたクレハノールが静かに幼馴染みに告げる。
クレハノールの言葉の意味を問うようにカエティスは彼女を見つめる。

「私も女だから分かる。愛しい人を守りたい。国も大事だが、国よりも大事なお前を守りたい。そう思って、ネレヴェーユ様はお前を助けたんだ。お前も同じ立場ならそうするだろう?」

「クレハ……」

「もちろん、お前の気持ちも分かる。だが、今は耐えろ。今、お前が無茶をして命を落としたら、それこそネレヴェーユ様の思いが無駄になる」

諭すように告げるクレハノールにカエティスは黙った。

「……俺は本当に無力だね。大事な時に何も出来ない」

自分の胸や手に巻かれた包帯を見つめ、カエティスは呟く。

「そうか? 私には君が無力だとは思えないのだが。君のお陰で私達は無事だったのだからな」