ゆっくりと右手を動かして、彼女の肩から落ちた白に近い緑色の長い髪を一房、手の甲で触れる。
霞んでいて見えない目で、彼女の顔と、今は自分達しかいない荒野を交互に見る。
荒野の向こうに、街の象徴の、育ての父がいる聖堂が小さく見える。
生まれ育った街と、彼女の顔を忘れないようにゆっくり頭を動かして何度も、何度も交互に見る。
しっかりと脳裏に焼きつけ、カエティスはもう一度、ネレヴェーユに目を戻した。
虚ろな水色の右目と銀色の左目が美しい女神を捉える。
「……さてと。ネリー、ちょっと俺、寝るから……」
「え……カエティス!?」
ネレヴェーユを呼んで、カエティスはゆっくりと目を閉じた。
彼女の髪に触れていた右手がぱたりと落ちた。
「いや……お願いだから……逝かないで……」
呆然とカエティスを見つめたまま呟いた。恐る恐るカエティスの手に触れた。冷たい。
「いやぁあああああー……!!」
冷たい彼の身体に、ネレヴェーユは絶叫に近い悲鳴を上げた。
何もない荒野で女性の悲鳴は空を貫き、白い光を呼んだ。
光はまっすぐ降りて、カエティスの身体を包む。
その光はトイウォース達がやって来るまで消えず、強く輝いていた。


