公爵の娘と墓守りの青年


「……そうそう。泣かない方が良いよ……」

微かに笑い、カエティスはネレヴェーユを見た。

「……ごめんなさい、私のせいで……」

彼女のその一言でカエティスは自分の死が近付いていることが分かった。
死が近いと悟った途端、ほとんど記憶の底にまで沈めた思い出が溢れた。
色々と思い出しながら、カエティスは口元に静かに笑みを浮かべる。

「――謝るなって。俺の意志でこんなになってるんだし。君のせいじゃないよ」

微笑もうとしたが、失敗してしまった。辛うじて動く右手でうっかり胸を触ってしまい、カエティスは顔を顰める。
胸にはぽっかりと穴が開いていて、ぬるぬるとした温かいものが右手に付く。

「でも……!」

「はい。この話はおしまい。最期に、君の膝の上で空へ行けるのは嬉しいね」

ネレヴェーユに気を遣わせないように、努めてあっさりとした声でカエティスは言った。

「そんな状態で、そんなことを言わないで……」

ネレヴェーユは顔を赤く染めながら、大粒の涙を溜めた。

「はは。こんな状態だから、明るくしたいんだよ、ネリー……」

何とか微笑し、カエティスはネレヴェーユを見上げた。