公爵の娘と墓守りの青年


「うん、まあね。焦ってるみたいだから、闇の力垂れ流しで逃げてるよ」

「闇の力が見えるの?」

「うん……って、ネリー?! どうして君まで……」

走る速度を落とすことなく、カエティスは自分の近くまで走ってきたネレヴェーユに驚く。

「私は女神だから、カエティス達を守れると思ってついて来たのだけれど、駄目だったかしら?」

「駄目じゃないけど……ただ」

「ただ?」

「俺は守らなくていいよ。俺は君を守る方だから」

穏やかに微笑み、カエティスはトイウォースの祖父を追い掛けた。
走っていたネレヴェーユは思わず立ち止まって、呆然としてしまった。

「……ちょっとかっこつけすぎたかな」

顔が熱くなったのを感じ、カエティスは手で扇ぎながら呟いた。
緩めていた表情を真顔に戻し、カエティスはまっすぐ山道を下る。
左右異なる色の目で、山の麓から結界の外へ逃げようとする黒い霧のようなものをじっと見る。黒い霧は慌てているのか、近付いて来るカエティスには気付かず、結界に寄る。

「……残念だが、そこは行き止まりだ」

沸き上がる怒りや憎しみ、悲しみを抑え、カエティスは鴨頭草の剣の柄を握り締める。