公爵の娘と墓守りの青年


「ディオリスの命がないぞ?」

歪んだ笑みを浮かべ、ディオンの首をクレハノールの父親の身体に乗り移ったトイウォースの祖父が腕で締める。

「うぐっ」

苦しげに顔を歪ませてディオンが喘ぐ。

「ディオンっ」

トイウォースの緊迫した声が背後から聞こえた。
カエティスは立ち止まり、トイウォースの祖父を鋭く睨む。

「……相変わらず、卑怯だな」

低く唸るように呟き、カエティスは持っていた鴨頭草の剣の柄を手が白くなるくらいに強く握る。

「卑怯ではない。用意周到と言ってくれないか」

「……ディオンを人質に何をする気だ?」

カエティスの問いに、トイウォースの祖父は眉を上げる。

「何をする気か? 分かるだろう。若く、強い魔力を持ち、それに耐えうる器――トイウォースが我には必要でな。それを手に入れるための人質だ」

その言葉に、背後からクレハノールの息を飲む声が聞こえた。

「孫のトイウォースでなくとも構わないぞ。お前でもな、カエティス」

トイウォースの祖父の言葉に反応して、ミシェイルとレグラスが腰に佩いた剣の柄をそれぞれ握る音が聞こえた。