公爵の娘と墓守りの青年


「えっ、い、いや、さっき口の中を切っちゃってね。その血だよ」

苦笑いを浮かべ、カエティスは嘘をつく。

「……俺やレグラスに嘘をつかなくてもいいですよ、隊長。俺達は誰にも言いませんし、どのくらい隊長と一緒にいると思ってるのですか?」

にこりと笑い、ミシェイルはカエティスに告げる。

「お前のことだから魔力、使い過ぎて血を吐いたんだろ?」

「……そんなところかな」

静かに目を閉じ、カエティスは長く息を吐く。
目を開けると、ミシェイルが眉を八の字に下げている。

「とりあえず、トーイのお祖父さんや亡者達を結界の中に閉じ込めたことをトーイに伝えに行こう」

心配そうに見るミシェイルの肩を叩き、カエティスは笑う。

「ミシェイル、行くよ。俺は大丈夫だから」

「た、隊長……」

「血を吐いたくらいじゃあ俺は死なないよ。俺がしぶといのはよく知ってるだろう? さぁ、行くよ」

安心させるように穏やかに微笑み、カエティス達はトイウォース達が待つ山の麓へ向かう。
その間にもミシェイルはカエティスの身を案じるように、何度も何度も目を配る。
平気そうな顔をしているカエティスだが、連日の戦いと街と山に結界を張った疲れか顔にはうっすらと脂汗が浮かんでいる。