公爵の娘と墓守りの青年


「いえ。何もありませんけど、貴方の方こそ、何かあったのですか?」

「俺? 何でもないよ」

「貴方の『何でもない』はあまり信用出来ません。前もそう言ってお腹を空かせていたではありませんか」

頬を膨らませて、ネレヴェーユは言った。

「いや、あの時はお腹は鳴ってたけど、空かなくなったというか……あっ」

何かを思い出したのか、カエティスは手を叩いた。
彼の行動を不思議そうにネレヴェーユは見つめた。

「俺のことより、君に渡したいものがあるんだ」

爽やかに笑い、カエティスは上着の裏ポケットに手を入れる。
そして、ポケットから取り出したものをそっとネレヴェーユの首に掛ける。
薄い鎖で繋がった透き通った水のような水色の玉の首飾りが胸の前で光る。
自分の首に掛けられたものに触れ、ネレヴェーユはカエティスに尋ねるように見上げる。

「お守りだよ。俺の魔力を込めてるから、ちょっと変わったお守りだけど、君を守ってくれるはずだよ」

「どうして、私に……?」

「君を守りたいから、じゃ駄目かな? 実を言うと、さっきの君が襲われそうだった時、血の気が引いたんだ」