公爵の娘と墓守りの青年


「……君には敵わないなぁ。罪深い人間にも手を差し延べてくれるなんて。俺、惚れそう」

照れ隠しのように頭を掻き、カエティスは笑う。その笑みには少しだけ、悲しみが残っている。

「……俺がもし、このままでいられたら、君の気持ちに応えるよ」

――これが今の精一杯。
そう告げて、カエティスは手を伸ばしてネレヴェーユの頬にゆっくり触れる。
カエティスの言葉の意味に困惑しつつも、ネレヴェーユは顔を真っ赤にして嬉しそうに笑う。
穏やかに微笑み、優しい眼差しでカエティスはネレヴェーユの頬から手を離す。
それから立ち上がり、カエティスは壁に立て掛けている二つの剣を腰に提げる。
黒い色のマントを羽織り、座り込んだまま自分の行動を見つめる女神に目を向ける。

「さっ、見回りしようか」

いつも見せる明るい爽やかな笑みを浮かべて、カエティスはネレヴェーユに手を差し延べる。

「はい」

カエティスの手を借りて、ネレヴェーユは立ち上がる。
そこでふとあることを思い出した。

「ちょっと待って下さい。食事をまだしていないではないですか、カエティス!」

「……あー……思い出しちゃったか。忘れてると思ったのに」