公爵の娘と墓守りの青年


「……大丈夫。何でもないよ」

そう告げた時、大丈夫だということを否定するかのようにカエティスの腹が盛大に鳴り響いた。
呆気に取られた顔でネレヴェーユはカエティスをまじまじと見つめる。

「…………」

カエティスはばつが悪そうな顔で頭を掻いた。

「……最近、近所に小さな子供や子犬や子猫がいるんだよ」

ぽつりとカエティスは話し始めた。
ネレヴェーユは静かに相槌を打つ。

「その子達は親や飼い主を亡者達に殺されたらしくて、いつもお腹を空かせててね。だから」

「だから、貴方はご自分の食べ物をあげたのですね?」

盛大に腹を鳴らしながら、カエティスは頷いた。
頷くのを見たネレヴェーユは口元を押さえ、笑った。
笑う女神をカエティスは驚いたように目を瞬かせる。

「……貴方らしいですね。いつから食べてないのですか?」

笑いを堪えながら、ネレヴェーユは尋ねる。

「……五日前だよ」

言いにくそうにカエティスは呟いた。

「五日前からですか?! どうして言って下さらなかったのですか!」

「言っても仕方がないし、いつものことだからいいかなぁーって思って」