「寝言は寝てから、息を止めて呟いてくれ」
「難しい注文だな」
にこやかに笑い、トイウォースはクレハノールの意志の強い茶色の目を見つめる。
「……君のお父上なのだが、王都にはいらっしゃらないと思う」
「何故だ、王子」
「王子じゃなくて国王だ。君の家、ウィンベルク公爵家は……」
「陛下っ!」
トイウォースの言葉を緊迫した声が遮る。
クレハノールは剣の柄を握り、声の方向を顔を動かす。
トイウォースの部下の声だ。
何度か見たことがあるトイウォースの部下は、少なからず顔が青ざめていた。
「どうした、ナウル」
青ざめているナウルという名の部下に顔を向け、トイウォースは説明するよう促す。
「亡者達が人々を襲いながら、こちらに向かって来ています!」
「……そうか。兵士達の準備はどうなっている?」
「大丈夫です。全員、配置は出来ています」
「分かった。民達を守るのが先決だ。深追いはするなよ。底なし沼に引き込まれるぞ」
落ち着き払った声音でトイウォースが指示すると、ナウルはすぐさま他の者達に伝えに走った。
それを見届け、トイウォースは隣の婚約者に目を向ける。
「君はどうする? クレハノール」
「逃げるつもりはない。私も行こう。どのみち、何処へ行こうと、出くわすのは一緒だ」


