公爵の娘と墓守りの青年


「美しいと言われた王都が見る影もないではないか」

目の前で、幾人もの亡者の類いがうろついている。
生きている人々は怯え、家から一歩も出て来ない。

「……まさか、王都も同じ状況だとは」

クレハノールは辺りを見回すと、先程まで人っ子一人いなかったはずの場所に幾つもの人影を見つけた。
警戒しながら、クレハノールは足音を立てずにその場所へ歩く。
ちょうど家と家の間の大通りとなっているその場所へ近付き、クレハノールは剣の柄を強く握る。
そして、大通りに足を踏み入れたと同時に、クレハノールは剣を振り上げた。
すると、その剣を弾く音が響いた。

「――?!」

声を上げず、息を飲むまでに抑え、クレハノールは自分の剣を弾いた相手を見る。
金髪、緑色の目の整った綺麗な顔立ちの青年が驚いた表情のまま、こちらを凝視している。

「……何だ、生きている人か」

それだけを呟き、クレハノールは剣を鞘に戻す。

「おいおい、それが婚約者に言う言葉かい? 一言、謝って欲しいな、可愛く」

「危ない時、先頭を切るのは部下だろう。それを自信たっぷりに先頭を切った貴方が悪い、トイウォース王子」

睨むように、不機嫌な顔でクレハノールは言い放った。