公爵の娘と墓守りの青年


「嫌だっ!」

そして、カエティスは即答した。

「……だよなぁ。私もカイの立場だったらそう言うよなぁ。だけど、それは駄目だ。あと、少しで、私が消える。その前に、死なないとお前を守れない」

胸を押さえたまま、カリンは落とした赤眼の剣を拾い、地面に突き刺す。

「だから、カイ。この剣で私を刺せ。この剣は浄化の剣だ。穢れたモノを浄化する。この剣で刺せば、私はお前をこの手に掛けなくて済む」

静かに、カリンはカエティスを見つめた。
赤い目が、カエティスの泣きそうに揺れる水色の右目と銀色の左目とぶつかる。

「……お前には辛い思いをさせるのは分かってる。だけど、これしか方法がない。こんなに大きくなるまで育てた大事な息子を、育てた私が……殺したくない」

カリンの目から光が流れた。
それにカエティスは気付いた。
白くなるまで手を握り、カエティスは俯いた。
柔らかな風が、悲しげにカエティスの金色が混ざった赤い髪を撫でる。
ゆっくり、静かに顔を上げ、カエティスはカリンの元へ歩く。
カリンが刺した赤眼の剣の柄に触れる。

「……先生……」

必死に泣くのを堪え、カエティスは呟いた。