「黒い、霧……?」
カリンはワルトに目を向け、じっと見つめる。
目を凝らすカリンだが、眉を寄せて首を傾げるだけだった。
「カイ、黒い霧は見えないぞ」
息子に目を戻し、カリンは立ち上がる。
カエティスを地に立たせ、倒れた拍子に落としてしまった愛用の剣を拾う。
それと同時に、またカエティスが引っ張る。
「ちょっと、カイ。いきなり引っ張……」
引っ張るカエティスを叱ろうとして、カリンは途中で口を閉じた。
「……おいおい、何だよ、これ……」
ワルトの周りに漂う黒い霧を呆然と見つめ、カリンは呟いた。
いきなり見えるようになったことをカリンは不審に思った。
そして、何故、見えるようになったのか、その理由に気付いた。
「カイ、お前にはこれがちゃんと見えているのか? だから、私の手を握って見えるようにしてくれたのか?」
カリンの問いに、カエティスは小さく頷いた。見せたくなかった、と表情が語っている。
カリンは苦笑し、無言のまま、こちらに攻撃を仕掛けて来ないワルトを静かに見た。
彼も、先程の男達と同じで顔色が悪い。
そのことにやっと気付いた。


