「そこなんだよな。流石の私も分からない」
「――それは私が答えよう」
別の男の声が聞こえ、カリン達はそちらに目を向けた。
木々の間から男がカリン達の方に向かって堂々した態度で歩いて来る。
「ワルト伯爵……」
驚きの声で、ベルナートが呟く。
「おいおい、オッサン。珍しいな、いつもなら木の影から指示するだけなのに、どういう風の吹き回しだ? 変なモノでも食べたか?」
人を見下すような、挑発するような言葉を吐き、カリンはその珍しい赤い目を細める。
軽口は叩くが、人を見下すようなことはしないカリンが唯一、見下す男、ワルト伯爵をベルナートも見る。
「私はな、高貴な存在に生まれ変わったのだよ。アイサリスの戦女神」
両手を広げ、ワルトは感嘆の声を上げる。
「……生まれ変わったとか言ってる割には、頭上は嵐が過ぎた後みたいなのは変わってないんだな。もう少し分かりやすい変化を見せて説明してくれよ、オッサン」
カリンの軽口に、ベルナートは思わず噴いた。
肩を震わせ、必死に堪えようとするベルナートに気付き、ワルトはこめかみに青筋を立てる。
「……笑っていられるのも今のうちだ。もうすぐお前の息子が我が手に入るのだからな」


