公爵の娘と墓守りの青年


「おいおい、ここはクウェール王国だぞ。とうの昔に国を出た私に今更、そんな異名使えないだろ。知ってる奴ももうほとんどいないよ」

「だが、そんな君に私は命を救われた。私以外にもたくさんいるはずだよ」

「……ああ、もう、話が逸れてるぞ、ベル。はい、この話は終わり。話を戻して、いつ、あの丸いオッサンの部下は来るんだ? 夕食前か? 後か?」

穏やかに微笑むベルナートから目を逸らし、照れ隠しなのかカリンは早口で聞く。

「私の部下の話だと、もうすぐここに来られるようだよ。一応、ウィンベルク公爵に用事という名目で」

照れを隠すカリンに笑みを零しながら、ベルナートは告げる。

「そうか。じゃあ、食前の運動か。カイ、あの丸いオッサンの部下が来たら、ミシェイルと小屋に隠れてろ。いいな?」

「え、でも、相手が前みたいに術者だったら、先生一人じゃ……」

心配そうに、カエティスは育ての親を見上げる。

「そんなに心配しなくても、問題ない。ベルが手を貸してくれるそうだからな」

勝ち気な笑みを浮かべ、カリンは親指でベルナートを差す。

「えぇっ?! 私も貸すのか……あ、いやいや、カエティス君、カーテリーズの言う通りだよ、うん」

心配そうに尚も見上げるカエティスの異なる色の目と、ミシェイルのつぶらな緑色の目とぶつかり、ベルナートは諦めたように頷いた。