クレハノールが後ろを向いたのと同時に、カエティスは脱兎の如くその場から逃げ出した。
「あー……これで次に会う時はお説教確定だなぁ」
そう呟きながら、カエティスは分厚い三冊の本を抱えたまま、風のように走る。
でも、自分の場合、仕方がないのだ。
それを彼女にどう説明すればいいのか、上手く表現が出来ないけれど。
「こらーっ! カエティス! 逃げるなーっ!!」
随分と離れた場所から聞こえるクレハノールの怒声が、カエティスの背中に突き刺さる。
「……当分は会わないように心掛けよう。うん」
そう心に決め、カエティスは街の端にある木々が覆い繁る小さな森に入った。
森に足を踏み入れた途端、カラス達が歓迎の声で鳴く。
「ただいまっ」
足を止め、木の枝に留まるカラス達にカエティスは笑顔で応えた。
抱えていた本を持ち直し、カエティスは歩き始めた。
カエティスの歩く速度に合わせ、カラス達も付いて来る。
「……心配しなくても、大丈夫だよ。彼等もここまで来ないよ」
そう言って、カエティスはカラス達に話し掛ける。
だが、カラス達はカエティスから離れようとはしない。
苦笑を浮かべ、カエティスは足をまた止める。
その時、幼い少年の声が聞こえた。
「たすけてー」


