公爵の娘と墓守りの青年


声と共にクレハノールは木刀を降り下ろした。

「えっ、ちょっと、わわっ」

本を抱えたまま、カエティスは後ろへ飛び退き、木刀を躱す。

「……避けれて良かったぁ」

ほぅ、と息を洩らし、カエティスは目の前の満足に笑うクレハノールを見る。

「流石だ、幼馴染み。勝負はこれからだぞっ」

クレハノールは更に木刀を左、右、斜め、下へと振る。

「勘弁してよ、クレハ。俺、勝負しないよ」

と言いながら、カエティスはクレハノールが振り回す木刀を躱していく。

「断るのは分かっている。だから、問答無用に巻き込むっ!」

とても楽しそうにクレハノールは木刀で次々に攻撃を繰り出す。

「参ったなぁ……しょうがない」

そう呟き、カエティスは立ち止まる。

「?」

立ち止まり、目を見開くカエティスを怪訝な表情で見て、クレハノールは木刀を降るのを止める。
それと同時に、カエティスは声を上げた。

「クレハっ、君のお父さんが怖い形相でこっちに来てるよっ!」

「何っ?! 父上が!?」

慌てた様子で言うカエティスに驚き、クレハノールは背後を向く。